十和田市内にある精神科病院の移転新築プロジェクトです。既存病院は市内中心の官庁の建ち並ぶ通り沿いにありましたが、3 キロ南に離れた十分な広がりのある新敷地へと病院を移しました。周辺は、住宅と大型店舗が並ぶエリアであり、誰もが訪れやすい・地域に開かれた病院を目指しました。車でのアクセスを重視し、メインアプローチと救急・サービスなどを明確に分け、分かりやすく安全なアプローチとしました。
初めて訪れる方を受けとめるエントランスは、ピロティ空間の下に主玄関を設置し、天候にかかわらずアクセスしやすい開放的で明るいホール空間としました。一方で、診療室の前はプライバシーの高い落ちついた待合を配置し、ゆったりとできる空間を目指しました。
病棟では個別性を重視した空間を徹底し、4床室であっても個室に近い病室環境を実現し、病室と食堂以外の生活の場を病棟内に複数設け、生活空間を選択できるようにしました。病棟と直接つながる作業療法室は、リハビリ空間の延長としてアリーナや中庭まで安全に行き来できる構成としています。
外観は、病棟階の直角ではない多角形のボリュームをモザイクタイルと左官材の2種類を切替えて外壁を分節化することにより、住宅の中で少しでも威圧感のないスケール感に近づけました。また、十和田の伝統工芸である南部裂織の市松織りとよばれる模様をモチーフとしたデザインを内外装に取入れました。
街全体が白い雪景色となる時期であっても、落ち着いた赤色のせっ器質タイルとアリーナの屋根が病院のシンボルとなり、地域と共にある “ いつでも頼りになる治療のための病院”となることを願います。