福岡市内にある緑豊かな環境の中に佇む精神科病院の増改築プロジェクトです。東区唐原の海から少し離れた小高い丘の裾野にあり、住宅地の中に建っていますが、歴史ある名門ゴルフ場に接し、大樹や整った緑と芝が顔をのぞかせる立地です。1955年の開設後、本館が築45年を経過し、老朽化と共に療養環境の改善と厨房機能の更新を模索されていました。
病院周辺の宅地化に伴い、敷地全体が第一種住居専用地域の指定を受けています。建築規制が厳しい中、既存北館の奥のグランドに新病棟(60床)を建築し、本館も含め病棟再編改修を行うことで、病院全体の環境改善を行い、急性期から一般、認知症、慢性期まで個々の症状に対応しやすい環境を整えました。
新病棟は、中央のスタッフステーションを境に、一般(急性期)と認知症治療の生活エリアを分けた運用ができる仕組みとしました。各ベッドに窓を持つ個室的多床室では、ゴルフ場の豊かな緑、自然の風、匂いを取り込めます。また、低層病棟の特徴を活かした高天井の共用空間には、時間と共に移り変わる外光を取り込み、時間の流れや季節の変化を感じることができます。恵まれた環境を活かした治療の場を目指しています。