精神科病院の治療において環境(空間)そのものが与える影響が大きいことは早くから指摘されている。我々は、これを肝に銘じ、建築を計画するために、次のようなコンセプトに基づくことを考えた。
豊かな治療、療養環境
- プライバシーへの配慮
- 選択できる環境とコミュニケーション
- 五感にやさしい空間
- 働きやすい職場
社会復帰を促す場づくり
- 豊かな交流空間の設定
- 地域に馴染む建築
病棟、外来・中央診療部門、デイケア、そして援護寮、地域生活支援センター、子供をかかえるスタッフのための託児所に至るまで、この思想を貫いている。そして、理論と技術に裏付けされた確かな医療が持つ合理性とスタッフの優しさを建築として抽象的に表現する事を心掛け、心が少し疲れたとき、気軽に訪れ、相談を受け、その空間の中でゆっくり時間を過ごすことでリフレッシュできる、そんな病院建築を目指した。夕方美濃加茂市街から見える病棟から漏れる明かりは、この地域で暮らす市民の皆様にとって、灯台の光のような存在になりうるものと信じている。
掲載誌
- 会誌 『病院建築』 No.139(2003.4)