奈良の畝傍山を望む万葉クリニックのすぐ傍に位置する医療法人南風会の事業所内保育所です。歴史の古い橿原市に残る木造建築の良さを次の世代にも伝えていきたいという施主の想いからこの建築ができました。
この建物は、連続する大きな切妻屋根が特徴の木造平屋建てです。軒を低く抑え住宅と同じスケールに近づけながら、室内を屋根と同じ勾配天井とすることで、伸びやかで変化のある空間としています。伝統建築の持つ木造架構の美しさを現在の工法で形づくり、子ども達が安全で快適に過ごせる空間を目指しました。
全体の構成は敷地中央に設けた園庭を、2棟に分けた居室が緩やかに囲んでいます。北の棟には、続き間で大小異なる空間の保育室を3室設け、各室を駆け回ることができるだけでなく、食事や昼寝等、各室毎の生活に応じた使い方も可能です。土間で仕上げた南の棟は、あえて室内と外部が曖昧なつくりとし、外遊びや園行事に使える多目的な小屋となることを意図しています。この2棟の狭間に大屋根が日よけとなる外部空間を設け、夏の強い日差しや雨天でも遊べる広場を用意しました。そのいずれもが中央の園庭と一体になり、自然の風、光、匂いを日々の生活に取り込みながら、子ども達が豊かな感性を身に着け、健やかに育つことを願っています。