超強化型老健として宮地病院と共に地域を支えてきた「老人保健施設あずさ」の移転新築であり、「個々の生活を継続させる療養環境」と「感染症に柔軟に対応しやすい老健」を新たなコンセプトとして取り組んだプロジェクトです。
多床室での感染症抑止が難しかった経験から全室個室で構成しています。居室を4室ごとの個室群としてまとめ、近隣の景色が所々顔をのぞかせる空間を廊下に面して設けることで、自室が分かりやすく、光や風が入る共用空間を用意しました。
個室そのものが自らの生活を組み立てやすい場であり、そのそばにリビング・ダイニングや機能訓練室、庭園を設け、療養生活そのものが在宅復帰に向けたリハビリに繋がることを意図しています。また、感染症対策として一部エリアの居室を陰圧対応とし、状況に応じ段階的に感染症管理エリアを調整しやすい仕組みを用意しました。
街に開かれたデイケアは、利用者が数グループに分かれて活動する場合もソファや家具で容易にエリア分けしやすいL型の大きな空間としています。
透かし積みレンガを外観に取り込み、古きよき神戸の街並みを連想させる素材として用いて、隣接する「潮騒の家」とは雰囲気を変えた表情にしています。
利用される高齢者にとって住み慣れた地域の中で、六甲山や湾岸、街並みを眺められる環境を活かしながら早期在宅復帰に向けた環境づくりを心掛けました。