奈良県南和地域で長年精神科医療に取り組まれ、地域に根差した医療・介護を模索し事業を展開されてきた下市病院の移転新築プロジェクトです。橿原市への移転という大英断をするにあたり、理事長が求められたものは、精神科治療にふさわしい空間の提供と合理的な機能の両立、そして今後大きく変化するであろう医療・福祉需要への追随性でした。これを受け、私たちが心がけたことは、利用者にとって訪れやすく、豊かで、機能的な建物を、できるだけシンプルな形態の中で実現することでした。

橿原神宮をはじめ歴史深い場所で、高さ20mの高度制限がある地域です。病院240床と老健80床をこの敷地内で実現するために、1フロア60床×2看護単位の構成としましたが、これを容易に展開すると平面的にも大きくなりすぎるため、病棟をいくつかに分節化し、動線を徹底して短くし、面積効率のよい病棟を実現しました。

病棟は、クラスター(4床室群)を複数構成することで、様々な特性に応じたゾーニングを組み易く、開放・閉鎖の選択もしやすい工夫をしています。急性期から療養まで同一フロア内で柔軟な運用がとれる構成です。畝傍山を望む食堂や機能訓練ができるデイルーム、多目的に使い変化に対応できる部屋も随所に設けてあります。