鎌ヶ谷市との市境に立つ、特別養護老人ホームである。建物高さ、土地の利用制限、コストという面で、かつてないほど厳しい制限の中、お年寄りにとって豊かな空間でありながら、スタッフにとっても運営がしやすい環境を徹底的に追及するために、スタッフと議論を重ねた。
お年寄りが心地よいと感じる環境、素材で建築を構成することが、必ずしもスタッフにとっては、ユニットを運営しやすい環境とはならず、スタッフが建物の管理に気を取られすぎて、本来当然であるべきお年寄りへのサービスがおろそかになる。しかし、建物はそこを利用する人によって、育てられて空間として成長するという側面がある。限られた数のスタッフで、それをどこまで許容するかという議論となった。お互い妥協することなく完成した空間は、シンプルで様々な変化にも対応しやすいゆとりある建築となったと思う。