個室主体の療養室

この施設は個室を主体に構成されている。個室にすることで、ベッド等を日常生活動作のレベルに併せて自由に配置でき、また、家庭から自分の馴染んだ物を持ち込み、自分だけの空間を創り出すことが可能になる。プライバシーに配慮するとともに、「一人になれる」ことと「コミュニケーションをとる」ことの選択性を意識した。

グループホーム的な構成

個室群を生活にあわせて小グループ化し、生活空間と介護空間が段階的に構成されるようにした。 定員80人+ショートステイ20人の入居者は、例えば食事のような日常的な場面では20-26人程度のグループを構成する。個室を中心として居室が展開されるため、個と集団の間に段階的に人が関われる場所をしつらえ、生活と空間のスケールの関係が出来るだけ家庭的なスケールから逸脱しないように配慮した。

地域に開かれた施設

高齢者が住み慣れた場所を離れることのストレスを考え、地域や周辺環境に開かれた施設になるようにした。

一番大きな空間である集会室は、中庭から直接出入りが可能で、特に地域の人との交流の場となり、北陸の長い冬の間は外部空間の代わりになる。南東に開かれた中庭へは玄関脇のゲートを入り回廊を通じて容易に入ることができ、地域と施設という小社会をつなぐ役割を持つ。1階では、中庭から各人の居室に直接アプローチすることも可能で、訪れる人に一つの家を連想させる。

集落的な景観

入居者が出来るだけ外部に出られること、たとえ出られなくなっても、一日の陽のうつろい、四季の変化、地域の人たちの気配等が感じられることを意図した。形態としても、水田の中に集落が点在する周辺の景色に馴染むように、内部のグループのまとまりにそのまま瓦屋根を掛け、一つの集落を形成するようにした。

仕上げはできるだけ触感の暖かな材料を使用し、居室のグループ毎に色にバリエーションを持たせた。

Award

  • 第20回石川県建築賞(1999)/石川県建築士会

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