森の棟は既存建物2棟を生かしながら3期・4年8か月の期間をかけて建設を行いました。
Ⅰ期は専門病棟を3病棟、これに付随する機能とデイケア、Ⅱ期は内科外来と薬局、総合スタッフルーム、講堂を、Ⅲ期で児童思春期の外来部門、院内レストランをつくり、「光の棟(D棟 2008年竣工)」「花の棟(A棟 1999年竣工)」と順次接続することで、各工期で病院機能を止めることなく完成に至りました。
アプローチ側の外観は低層におさえ光の棟のエントランスと連続させ、訪れる人を圧迫感なく迎え入れる表情を創りました。十分と言えなかった建物前面の駐車場も拡がり、患者・家族も利用しやすくなり、毎年開催される「あさかフェス」などのイベント会場にすることもできます。
■専門病棟の階層構成
病棟は「児童思春期」「認知症」「身体合併症」という性格の異なる専門病棟を同形の構造体の中に納めています。クローバー型の個室的多床室を放射状に配置し、それぞれの病棟に相応しい病室構成としました。2階の合併症病棟はベッド上の処置が必要となるため、ベッドまわりのスペースを確保しました。3階の認知症病棟は個々のテリトリーを明確にし、デスクやチェストなどをしつらえました。児童思春期病棟は個室化し、ユニット中央部に子どもたちのスペースを確保しています。
■デイケア・児童思春期外来
1階南側の環境のよい位置に精神科デイケア、認知症デイケア、児童思春期デイケアを配置しています。各部屋は総じて木に囲まれ自然光が潤沢に入る建築構成とし、共通の庭を設け異なる年代が交流できるようにしました。
児童思春期外来は児童デイケアと連携できるような構成とし、子どもたちが安心して診察を受けられる環境を用意しました。
■アートの「森」
「森の棟」は敷地の隙間を利用して期ごとにB棟・本館の機能を移し替えながら建替えしたため、病院機能を効率的に充実させるだけでなく、機能をつなぐことでこれまで以上に豊かな「ゆとり」の空間を生み出すことができました。あさかホスピタルグループは様々なアート活動を通して豊かな社会をつくることに成果を上げていますが、この建築内外の「ゆとり」を利用して、その活動を支援することも今回のテーマの1つです。