10年前に完成したA棟をはじめとして、既存病棟や各部門の改修を重ねてきましたが、長い入院生活に配慮し、病棟内での療養環境をいかに向上させるかという精神科病院の基本的な建築的課題をすでに達成しつつある中、次の段階として、いかに治療を進め、早期に社会復帰できる環境をつくることができるかが、このプロジェクトの主題となっています。そのためには早期受診が必要であり、「精神科」の敷居をできるだけ下げる必要があります。全室個室の急性期・ストレスケア病棟を増設し、リハビリ部門を充実させ、病院の顔となるエントランス、外来部門を一新しています。機能、基準を満たすことに追われていた精神科病院が、ゆとりを持った魅力的な空間で満たされ、ともすれば社会の中で疎外感を抱いていた患者様が、温かく迎えられ、自ら積極的に治療を受ける気持ちになれる環境を作りたいと考えました。
その上で、個別性を尊重し、医療スタッフとできるだけ近いところで治療に専念できる環境を徹底的に追求しています。