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高度急性期医療を支え続けるハードづくり
岐阜県立多治見病院
岐阜県東濃・可児地域における基幹病院として、高度急性期・急性期医療を提供し続けてきた岐阜県立多治見病院の中央診療部門の建替えプロジェクトです。このプロジェクトは大きく分けて3つのフェーズで構成されています。【1期工事】新中央診療棟建築工事、【2期工事】既存棟改修工事、【3期工事】既存棟解体・外構整備工事になります。その1期工事の新中央診療棟が2024年1月に竣工しました。今回のプロジェクトでは基幹病院として求められる機能を実現しながら、同時にこの病院の将来展開を見据えた計画としています。
診療機能の連携強化
5層にわたる診療機能をいかに連携させるかが重要なテーマとなりました。そこで機能別エレベーター(EV)とスタッフ専用階段、部門間をつなぐホールを一体化した空間をエマージェンシーパス(EP)と称して建物中央部に配置しました。
1階の救急から血管造影(2階)、内視鏡(3階)、手術部・救命救急センター(4階)、NICU(5階)、さらに屋上のヘリポートがEPによって連携可能となっています。
またEPはセキュリティーレベルを上げることで患者とスタッフ動線の完全分離が実現でき、迅速かつ安全な患者搬送を可能にしています。
[階層構成]
1階には救急・外来・中央採血・生理検査部門など患者の利用頻度の高い部門を配置し、利便性に配慮しています。外来の中央部には外来日帰りセンターを設け、処置・注射及び日帰り手術後のリカバリーの効率化を目指しました。
中央診療部門の要となる4階の手術部と救命救急センターは直線的につなぐことにより両部門のシンプルで一体的な運用が可能です。さらに救命救急センターには手術室と直結した病室を設置することで、手術後の患者搬送の負担低減にも寄与しています。また救命救急センターのICU病室には可動式パーティションを設置し、患者の状態に合わせオープンな環境から個室への転換を容易にしています。
防災対策の強化
災害拠点病院として免震構造の採用と合わせ、浸水対策を強化しました。
放射線機器などの重要医療機器を2階以上に設置し、1階が浸水した場合でも診療が継続可能としています。また、一部のエレベーターには止水板を設置し浸水時でも稼働可能としています。さらに、敷地境界に沿った壁堤防を3期工事完了までに設置予定です。
地域に親しまれる病院であるために
地域ブランドの活用
岐阜県産材の東濃ヒノキを用いたカーテンウォールや地元で生産されるタイルを外壁・サインに使用しています。照明においても地域資材の美濃和紙を使用することで利用者にとって温かみのある空間を創出し、地域の顔となるような建築を目指しました。
わかりやすい外来
フロア全ての外来受付を一望できる外来モールや吹き抜けを設け、視認性を高め患者にとって現在位置がわかりやすい平面・断面構成としました。外来部門の内装は患者が落ち着いて治療を受けられるように“清流の国ぎふ”にふさわしい青色をポイントカラーとして清涼感を持った落ち着きのある空間としています。
患者によりそう病棟
整形病棟と小児・女性病棟の内装は既存の中・西病棟の木調を踏襲し、温かみのある空間としました。NICU・GCUの照明には 1 日の太陽光の明るさを再現したサーカディアン照明を使用することで、新生児の生体リズムが乱れないよう配慮をしています。また、NICU の各ベッドは面会廊下から直接入ることができ、家族がスタッフステーションや他の新生児の前を通らず気兼ねなく子供と面会できるようにしています。
建替え変遷
将来展開への備え
今回のプロジェクトは、2005年に参加した新病棟建設(現中・西病棟)プロポーザル時に想定した内容が実現したものです。当時、南側敷地に建替え余地を残す提案をし、20年後にその場所に今回の新中央診療棟が完成しました。このように病院の建替えでは常に将来展開を見越しスムーズに機能を更新できることが重要になります。
今回もこの先既存棟が解体され、エントランスなどが再編されることを想定した動線計画としました。将来的に木製カーテンウォールの待合ホールは、新しいアプローチに面した病院の顔となる空間へと場面転換することを意図しました。
建築概要
建築主: | 地方独立行政法人 岐阜県立多治見病院 |
所在地: | 岐阜県多治見市 |
病床数: | 105床(全体539床) |
構造規模: | 鉄骨造、免震構造 地上5階、塔屋2階 |
延床面積: | 23,893m² |
竣工年月: | 2024年1月 |
撮影: | リフレクト、所員(※1) |
出典: | 国土地理院(※2) |
文責:川村真弘