かすみケアグループ:医療・福祉・住まいを通して地域に貢献するかたち

当社設計施設(霞ヶ関南病院除く)

かすみケアグループは、医療法人真正会、社会福祉法人真正会、一般社団法人Hauskaaという3つの法人が一体となり、川越市内に医療・福祉の事業を展開しています。入院や外来(医療)、通所や訪問(介護)などのサービスを展開して、地域の方々が安心して暮らし続けられるよう、それぞれの施設や専門スタッフが互いに連携するなど、一体的な地域包括ケアを実践しています。私たちが手掛ける建物としては、介護老人福祉施設「真寿園」、地域密着型認知症グループホーム「アダーズあいな」に続くプロジェクトが近ごろ2棟完成しました。

この2つの建物は共通のデザインコードを用いています。木製ルーバーと深緑の外壁材です。これは北欧の街並みや建物からヒントを得たもので、木材の自然な色合いや温かさ、深緑の落ち着いた色彩を共に使用することで、地域に安心感を与えることを意図しました。(Hauskaaとはフィンランド語で『楽しい時間』という意味です。)

Hauskaaかすみ野

北東側外観

本計画は、サービス付き高齢者向け住宅でも有料老人ホームでもない、60歳以上であれば誰でも入居できる、新しいタイプの高齢者向け共同住宅です。

昭和50年代、かすみ野の住宅団地には大通りに面して様々な商店が立ち並んでいましたが、時代の変化や住民の高齢化とともに形を変え、その面影は失われてしまいました。昭和47年に開設された霞ヶ関中央病院を、霞ヶ関在宅リハビリテーションとして近隣へ移転新築し、病院跡地に本建物を建設するにあたっては、かつての時代の風景をいまの時代に合ったかたちで再現したいという思いが強くありました。将来的には、団地に一軒家を構えていた方が住み慣れた地域で暮らし続けるため、Hauskaaかすみ野に移り住み、自宅を若いご家族に貸すというような循環が発生することも視野に入れた計画です。

1階平面・配置図/断面図

地域に開かれたパサージュ

元霞ヶ関中央病院の建物の一角には、会話を楽しんだり軽い運動が行えるスペースがあり、長く地域の方々に親しまれていました。その使われ方を継承しながら、かつての商店街の賑わいを取り戻す役割を持つ場所として、建物の中心に、地域に開放された空間=パサージュを設けました。パサージュは吹き抜けのある広い空間とし、飲食や談話、ライブラリーなどのスペースとして様々な使い方ができます。ここが地域活性化の起点になるとともに、上階に住む高齢者が地域活動に参加しやすくなり、充実した社会生活を営むことができると考えました。

各テナント、住戸、事務所などへはパサージュを通ってアプローチできる設えとすることで、賑わいのある空間を演出しています。

パサージュ(エントランスホール)

高齢者が住みやすい住宅

2階から上は約40㎡(4階は60㎡)を基準とした高齢者向けの住宅(30戸)の計画です。高齢者向けといっても、若い人が住んでも違和感がなく、介護が必要になっても生き生きと住み続けられるさりげない配慮が求められました。各住戸は細かく仕切らずゆったりとした空間で、玄関→リビングダイニング→寝室→水周りの関係性で構成し、奥に行くに従いプライバシーが高まる設えとしています。キッチンは高さを一般的な85センチとし、下部をオープンなつくりとしていますが、簡単な工事で高さを9センチ下げることができます。この仕掛けにより、車椅子での利用にも対応可能としました。

居室

デリカフェ Rikas:お惣菜とカフェ

地域になじむ建築

住宅地に立つ建物としてはやや高層になるため、できるだけ周囲に対して圧迫感を与えないよう、住宅階(2~4階)を4つのボリュームを分けて配置しました。また、外壁タイルとパサージュに使用したタイルは、細かな横線のテクスチャーをもった一般に普及しているタイプですが、これを市松状にデザイン貼りすることで、光の当たり方、見る角度によって繊細かつ華やかな表情の壁面を構成することができました。

建物概要

  • 所在地:埼玉県川越市
  • 建築主:一般社団法人Hauskaa
  • 施設内容:共同住宅、飲食店、店舗、事務所
  • 構造規模:鉄筋コンクリート造 地上4階
  • 延床面積:3,082 ㎡
  • 竣工年月:2019年6月
  • 撮影:千葉顕弥

霞ヶ関在宅リハビリテーションセンター

南西側外観

本計画は60人が日中過ごすことができるデイケア=「デイリビング」計画です。計画にあたっては霞ヶ関中央病院の病室跡を利用していた際の使われ方を踏襲しながら、面積をコンパクトにする必要がありました。

外観は、周辺環境に配慮し、戸建てのスケールに馴染むボリュームにすることを心掛けました。片流れの屋根を採用し、隣地に近い部分を低くしながら、屋根の高い部分にはハイサイドライトを設け、建物中心の吹き抜け空間を通して建物全体に自然光が行き渡るようにしています。

階層構成は、1階にデイリビング、2階に地域開放スペースとスタッフエリアというように、利用者・スタッフ・地域住民のエリアを明確に分けて配置しました。

デイリビングは複数のリビングを可動間仕切で仕切り、少人数による落ち着いた活動とリビング全体を一体的に利用したイベント等を行なうために、部屋の広さを自由に調整できるように工夫しました。各リビングはラウンジに面しており、より小規模な活動や湯上がりの休憩など多用途に使用することができます。また、診察室や静養室、水廻りはラウンジからのアクセスとし、各リビングから近い配置としました。

2 階の地域開放スペースは、エントランスに設置した階段からアクセスするつくりとし、地域の方が気軽に利用できることを意図しました。

エントランスホール

ラウンジ ・リビング(間仕切を開放したところ)

建物概要

  • 所在地:埼玉県川越市
  • 建築主:医療法人真正会
  • 施設内容:老人デイケア
  • 構造規模:鉄骨造 地上2階
  • 延床面積:1,267㎡
  • 竣工年月:2017年12月
  • 撮影:千葉顕弥

 

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