「公共建築賞特別賞」受賞の価値
昨年、私たちが設計した「長野県立こころの医療センター駒ケ根」が3年に一度表彰される「公共建築賞特別賞」を受賞することができました。同時に表彰された東京駅舎やスカイツリー、国立京都博物館など錚々たる建築家による著名建築に並んでの受賞は誇らしいことでした。この作品は6年前に完成し、病院として十分使われた上での評価ですので、まさに公共建築として価値があると自負しています。
しかし、それ以上に精神科病院が純粋に「建築」として評価されたことに大きな意味があると思っています。この複雑で生きにくい現代社会の中で精神病が国民の5大疾病に数えられるようになり、精神科医療は身近なものでなければなりません。ところが、かつての鉄格子の外観を連想し、いまだに〝怖いところ″という精神病院のイメージが敷居を高くしています。そのような環境の中で今回の受賞によって、精神科病院の機能を十分満たしながらも治療、リハビリに相応しい空間を一つ一つ丁寧に追求していけば、その建築は魅力的で美しいものになり得るということを示せたのではないかと思います。
この結果とともに建築の魅力が精神科病院の敷居を下げ、少しでも心の病で苦しんでいる人の受診を促し、地域に変えるための手助けができたならば、この難しい建築の設計に長年取り組む私たちにとっては望外の喜びです。
鈴木慶治
リンク:一般社団法人公共建築協会